2021年11月04日
第34回東京国際映画祭(5)『スワン・ソング』『市民』
🎬『スワン・ソング』トッド・スティーヴンス監督、脚本、プロデューサー/アメリカ/105分/ワールド・フォーカス
街一番の美容師だったパット(ウド・キア)は、今は引退して老人施設で暮らしている。そこに以前長い間髪や化粧をした大女優のリタが亡くなり、遺言で死化粧はパットと言い残していたと弁護士が知らせに来た。
リタとは良い別れ方をしなかったので即座に断るが、昔の色々のことを思い出すうちに気が変わって、サンダスキーの葬儀社へと歩き出す。
題名はスワン・ソングで白鳥の歌?ならエレガントなゲイ男の物語かと思った。半分はエレガントだが時代を遡ること約4、50年前のAIDSが恐れられていた時代の暗い思い出と現在のゲイの老人(実在した人)が描かれている。
その老人を演じるのはウド・キア。御年80歳前だから役柄とぴったり。装いもよれよれ寝間着からゴージャスなショー用の衣装まで彼の身体に吸い付いているように感じ、魅了された。
🎬 『市民』テオドラ・アナ・ミハイ監督、脚本/ベルギー、ルーマニア、メキシコ/135分/コンペティション
メキシコの北部に暮らすシェロ(アルセリア・ラミレス)は、思春期の愛娘と二人暮らし。若い女に走った夫とは別居中。おしゃれな娘はママにも化粧をして上げてからボーイフレンドとデートに出かけた。だが娘を見るのがこの時が最後だった……。
メキシコの殺人、誘拐多発は耳にしている。友人が15年前にメキシコシティに団体旅行に行った時、ガイドさんからホテルのタクシーを利用すること、晩の外出は禁止と言われたと教えてくれたことを思い出した。現在はどうなんだろう。
さて、この『市民』すこぶる評判がいい。他に評判が良いのは韓国映画の『オマージュ』だ。このどちらかに賞が、と思っているがコンペティションを全部みているわけじゃないので早合点かもしれない。
公開は80%あると見込んだので内容は書かないが、「国の汚れ」「惨さ」がきつく描かれている。
一番印象に残ったのは最初の場面で娘が、さあ、デートに行くわとゴムでしばった長い髪からゴムを取って豊かな髪になった時の輝く美しさと、反対に母親が長い髪をバッサリ切るシーンが目に焼き付いている。