
🎬「デカローグ 5.ある殺人に関する物語」
若き弁護士で理想に燃えるピョートル・バリッキ(クシシュトフ・グロビシュ)は、嫌がらせや暴力行為を常にしていて、しまいにはタクシー運転手を殺してしまった二十歳のヤツェック・ワザル(ミロスワフ・バカ)の弁護を担当した。
若き弁護士ピョートルはヤツェックの死刑判決を免れさせることに失敗して落ち込んでいた。死刑執行の前にヤツェックはピョートルに面会を希望してきた。
死刑執行の場面もあり今までとは違った雰囲気に驚いた。ヤツェックは刑が決まって裁判所を出る時、弁護士が窓から大きな声で自分の名を呼んでくれたことが嬉しかったと言い、死刑直前に何故自分がこうなったかのきっかけを話し出すのだ。
それを聞いていると「人間はあるきっかけでとんでもない方向に進んでいくものだ」とヤツェックに同情した。
🎬「デカローグ 6.ある愛に関する物語」
友人の母親と暮らす19歳の孤児トメク(オラフ・ルバシェンコ)は郵便局に勤めている。集合住宅の向かいの棟に住む魅力的な女性マグダ(グラジナ・シャポォオフスカ)の家庭を毎日望遠鏡で覗いていた。
かれはマグダに近づきたくて、無言電話をかけたり、集合住宅内の牛乳配達をしたりしてチャンスをねらっていたが……。
ひょんな誤解から2人の間柄は近くなるが、求める愛は合致しない皮肉があった。同居する友人の母親(ほぼ老婆)もトメクに執着があって、不思議な三角関係を覗かせてもらった。
🎬「デカローグ 7.ある告白に関する物語」
両親と一緒に暮らしているマイカ(マヤ・バレウコフスカ)は22歳。大学を退学して6歳の妹アーニャを連れてカナダに逃れたいと考えていた。
だがアーニャの旅券は母親のエヴァ(アンナ・ポロヌイ)の署名が必要だった。
実はアーニャはマイカが16歳の時に産んだ子で、父親はマイカが通っていた学校の教師。そこの校長はマイカの母親エヴァだった。スキャンダルを恐れたエヴァがアーニャを自分の娘にしていたのだ。
自宅でパイプオルガンの修理をしているマイカの父親は存在感が薄く、家はエヴァの思いどおりだった。
何棟もある大きな団地で繰り広げられる10の話だが、いろんな家庭がある。住む人は中流の上といったところだ。ひと部屋が3LDKほどだろうか。
表向きは姉妹だが本当は親子で、母役は実権を握る自分の母だ。話がこんがらがる。自分の産んだ子が他人に育てられるのはままあるが、同じ家庭で自分の母に取られるのはどんな気持ちだろう。
いろいろ手を尽くすが6歳の娘が(習慣的に)選んだのは自分ではなかった失望は、ずっと癒えることはないだろう。