2020年10月03日
skipシティ国際Dシネマ映画祭はオンラインで(4)『願い/Hope』『ザ・ペンシル』
🎬『願い/Hope』マリア・セーダル監督/ノルウェー、スウェーデン/125分/日本初上映
6人の子どもに囲まれて暮らすアンニャ(アンドレア・ブライン・フーヴィグ)とトーマス(ステラン・スカルスガルド)は長い間事実婚の中で互いを尊重する成熟した関係だった。だがクリスマス前夜にアンニャは末期の脳腫瘍の診断が下された。アンニャとトーマスは病魔という試練に向き合うことになって……。
ちょうどこの作品を見る日の朝に、末期癌の祖母を病気を告知せず、親族が嘘の結婚式をして祖母と最期の別れをする『フェアウェル』を観たばかりだったので、正反対の「自分と夫」だけ余命を知っていて周りは知らせない設定のこの作品にいろいろ考えさせられた。
しかし余りにも薬の影響でイライラが募り悲観的になって隠してはおけない精神状態になり子どもらを集めて病名をあかし余命3ヶ月と言ってしまう。
そして大晦日の日に夫婦の結婚式と大忙しとなるのだ。たった10日間ばかりの家族の模様が女性監督さん自らの体験から描かれている。
🎬『ザ・ペンシル』ナタリア・ナザロフ監督、脚本/ロシア/93分/日本初上映
政治犯として囚われの身になっている夫の刑務所のあるロシア北部の田舎にやって来た妻アントニーナ(ナデジダ・ゴレロワ)は、地元の学校に美術の先生として働き始める。
受け持ったクラスには狂暴で反抗的な少年ミーシャが支配していた。今は刑務所だがミーシャの兄は誰もが怖れる凶悪ヤクザで出所間近い。だから村中がミーシャにも当たらず触らずの態度だ。そんな中でもアントニーナはミーシャに対して臆することなく行動するが……。
寒々とした景色の中、都会のサンクトペテルブルグから来た女は泥道を歩いて粗末な宿に着く。汚れていて電気が使えない宿だが昼間鉛筆工場で働く女(良い俳優さんだ!)が親切にしてくれる。
翌日、夫のいる刑務所に面会に行くが「こんなところまで来るな、サンクトペテルブルグに帰れ」と素っ気ない。
学校もミーシャ一人のおかげで授業も満足にできないが、生徒はミーシャのいないところでは素直で、アントニーナ先生の作品を見て、素描の美しさに驚き物をよくみる、角度を違えてみる 等々の描く楽しさを学んでいく。
台詞は少ないが薄汚い宿、荒れた風景、乱暴なミーシャと兄、やる気がない先生の人間模様が丁寧に描かれていた。
アントニーナは荒れた土地を「美しい土地だわ、絵になるところがいっぱいあるわ」と言うが、目の前に広がるのは荒れ地ばかり……。
鉛筆工場の流れの工程の映像と彼女の目に映ったであろう映像がミッキーには同根のように感じた。
これも女性監督作品。嬉しい。