2019年10月19日

山形ドキュメンタリー映画祭2019(8)『誰が撃ったか考えてみたか?』(仮題)『ラ・カチャダ』

昨日は1時間半ほど歩いて娘アパートに戻り昼寝をしてから「文藝春秋」の11月号をパラパラ見ていたら『真実』の是枝裕和監督の「カトリーヌ・ドヌーブは樹木希林さんに似ていた」が載っていた。『万引き家族』も『真実』も好みでないし、カトリーヌ・ドヌーブさんも樹木希林さんも好きな女優さんではない。けれど、目休め日でもこれだけは読んだ。

俳優さんたちの話は想定内だったが、撮影環境が日本とフランスでは大いに違い、ランチ時間を入れて朝10時から準備して7時半まで。次始まる時まで12時間開けなければならないという決まりがあると書いてあった。土日は土曜日が2倍の、日曜日は3倍のギャラを払わないといけないとも書いてあった。

カトリーヌ・ドヌーブさんと樹木希林さんの似ている点は細かくは記されていなかった。お暇があれば立ち読みでどうぞ、といったところだ。


🎬『誰が撃ったか考えてみたか?』(仮題)トラヴィス・ウィルカーソン監督/アメリカ/90分/インターナショナル・コンペティション

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監督さんの曾祖父が1946年にアラバマ州のドーサンで黒人の男を射殺する事件を起こした。 
これまで家族、親族の間でも隠されていたが監督は古い新聞記事を基にして、忘れられてしまったような忌まわしい過去を掘り起こして、現代社会やこの地域の集団的差別の実像を追っている。

公式カタログに監督さんの言葉が載っている。「私の家の汚点を、挑発するために作ったのではなく、自虐のために作ったのでもない。曾祖父・SE・ブランチがやったことは「間違っていた」と正直に認めることだった」と、書いてあった。

ナレーションをつとめる監督さんの口調も冷静で、聞きようによっては他人事のように感じる時もあった。しかし、周りの親族に与える影響は、70年以上たった今でも生々しく傷口がえぐられていく。

事件そのものは「正当防衛」で無罪となった事件だったが、解かれていく内容の「殺人者だった曾祖父」の隠れた歴史、隠れた顔があぶり出されていた。

★作中に『アラバマ物語』が何回か映し出される。グレゴリー・ペック演じる弁護士アティカスと監督さんの思いが一致する意図があったのだろう。


🎬『ラ・カチャダ』マレン・ビニャヨ監督、脚本、撮影、録音/エルサルバドル/81分/インターナショナル・コンペティション

エルサルバドルの露店で物売りをして生計をたてているシングルマザー5人が演劇のワークショップに参加。それが終わってから講師と共に「ラ・カチャダ」を立ち上げた。露店の売り子の合間にリハーサルを重ねていくうちに自分たちの生活や悩みに向き合うことになる。


監督さんはちょうどこのドキュメンタリーに出てくる5人のと同年代だ。ずっと暗い事件や見につまされるドキュメンタリーの中にあってこの作品は苦労もその苦労を思い出して泣く場面はあるが、みんな元気で今を生きている。

そんな中で「売り子が女優をやってると言われるより、女優が売り子をしている!」と言っていた言葉が印象的だった。
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2019年10月18日

山形ドキュメンタリー映画祭2019(7)『十字架』

山形映画祭の疲れか偏頭痛の兆候が出たので今日は目休め日にした。と、言って読書も目を使うなぁ〜と思って本も持たずに散歩に出た。(本当は『シライサン』というホラーの試写が松竹試写室であるのだがあきらめた)

足が向くのはやはりポレポレ東中野、ここでやってるので気になるのが『春画と日本人』だ。これは名古屋シネマスコーレでやるので我慢した。

今日一日映画、読書なしで過ごせるか、まあご近所をひたすら歩いて新しいお店でも開拓しよう。

🎬『十字架』テレサ・アレドンド、カルロス・バスケス・メンデス監督/チリ/80分/インターナショナル・コンペティション

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チリ南部の小さな町で起きた製紙会社組合員大量殺人事件。それは軍事クーデターから数日経った1973年9月。その日19人の工場労働者が警察に連行され、6年後、地中にあった遺体が発見された。それから40年後、事件への関与を否定していた警察官のひとりがその時の証言をくつがえしたが……。

おおらかに川で水浴びをする女たちの映像で始まったが、それも銃声や爆弾の音でかき消されていった。ラジオから流れるのはクーデターのニュースだ。音は激しいが、画面は静かに当時の埋められていた森周辺を映していた。

事件の6年後、被害者たちが遺体が出てきた場所にたくさんの十字架を立てていて、日本の卒塔婆のように見えた。一人の警官が証言をくつがえし19人を殺したといっても遺族たちの悲しみは癒えず、亡くなった方の無念も晴れていないはずだ。

★証言した警官はチリ本部からの命令で19人をバスに乗せて行き、途中の場所で下ろして銃殺。土を掘って埋めたが深く掘らなかったので2、3日で犬が掘り起こして町に噂が立ったのでもう一度埋めなおした。と、語っていた。「このことを話すとお前たちの家族共々同じ目に合わす」と上司から命令された。誰もそのことについて仲間うちでも話すことはなかったと語っていた。
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2019年10月17日

山形国際ドキュメンタリー映画祭2019 (6)受賞作品発表 と 『東京干潟』

★インターナショナル・コンペティション

ロバート&フランシス・フラハティ賞(大賞)『死霊魂』監督:王兵(ワン・ビン)

山形市長賞(最優秀賞)『十字架』監督:テレサ・アレドンド、カルロス・バスケス・メンデス

優秀賞『ミッドナイト・トラベラー』監督:ハサン・ファジリ 『これは君の闘争だ』監督:エリザ・カパイ

審査員特別賞 『インディアナ州モンロヴィア』監督:フレデリック・ワイズマン

★アジア千波万波

小川紳介賞『消された存在、__立ち上る不在』監督:ガッサーン・ハルワーニ

奨励賞『ハルコ村』監督:サミ・メルメール、ヒンドゥ・ベンシュクロン 『エクソダス』監督:バフマン・キアロスタミ

★市民賞 『死霊魂』監督:王兵(ワン・ビン)

★日本映画監督協会賞 『気高く、我が道を』監督:アラシュ・エスハギ


🎬『東京干潟』村上浩康監督、製作、撮影、編集/83分/日本プログラム

多摩川の干潟でシジミを獲りながら猫たちと川の土手で小屋がけをして暮らす80代の老人を通して、彼の生きた昭和から令和にかけて時代の流れを描いている。

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これは台風の影響で中止になって、別の日の夜8時過ぎに上映が叶った。だから観ることができた作品。

日本での上映はすでにポレポレ東中野で終わっていて、今週土曜日から名古屋「シネマスコーレ」で公開決定している。是非ともスコーレにお出かけいただきたいので少し紹介したい。

まず監督さんがこの老人と出会った経緯は、川に棲むカニのドキュメンタリーを撮るために(その作品も『蟹の惑星』製作されている)毎日通っていたところ、老人から声をかけられたのが発端。

いろいろ話し込んでいるうちに老人の人生と日本の高度成長の過去の痛みと今現在起こっている環境破壊やペット遺棄などが浮かび上がってくる。

★この台風の影響で監督さんは干潟の老人が心配でSNSで呼びかけたら、映画を観た方30人以上が老人を訪ねた。小屋は流されたが老人と猫は無事という報告があった。
posted by ミッキー at 11:38| Comment(0) | 映画祭・映画関連催し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする