中東の貧民窟で暮らす12歳のゼインは、貧しい両親が出生届を提出していないためIDを持っていない。ゼインは近所の店で配達や店の掃除をしてわずかな賃金をもらっていたが、かわいい妹が親の決めた年上の男性と結婚させられてしまい、やりきれなくなった彼は家を飛び出す。
仕事を探そうにもそう簡単には見つからなかったが、ひょんなことからエチオピア移民の女性と知り合い、彼女の赤ん坊を世話しながら一緒に暮らすことになったが・・・
『キャラメル』で長編デビューしたレバノンの女性監督ナディーン・ラバキーさん。
子が親を訴える……主人公のゼインは非常に頭がいい、こんな環境でも一番いい方法を考えることができる子。例えば、妹に生理がくるとゼインは「口べらしで嫁に出されてしまう」ことを知っているので隠すように忠告していたし、家出した時には、盗んだスケボーに大きなバケツを括り付けて赤ん坊を乗せて世話をしていた。
だが、本当にこんな家庭があるのだろうか。日本人の感覚ならこの状態で次々子を産む感覚がわからない。夫婦とも身なりを整えて裁判所にくる様子を見ると貧民窟に住んでいるようには見えない。
これはどうしようもない親と家族の話だが、不思議と暗い気持ちにはならなかった。それはきっとゼイン・アル・ラフィーア君の姿に、強く生き抜くエネルギーがそう感じさせるのだと思う。