無名の画家ジョルダナ(タニア・レイモンド)は、生活のためにリー・ローレンスというアーティストに雇われて、そのアーティストの名前で描いていた。
そんなある日、有名な美術雑誌に絶賛されて大々的に彼女の描いた絵画が載った。それを見たバイヤーたちが突然彼女の仕事場にやって来た。
ゴーストライターならぬゴーストアーティストだ。彼女の工房のある家はけっこう広く、ところ狭しと置いてある絵はわけのわからない前衛的な画(もう一人の監督さんジオ・ゼッグラーの手による作品)で、彼女は画商たちに「私は頼まれて描いているだけ、私の絵ではない」と何回も言うが「描いているならあなたの絵だ」と引き下がらない。
まあ絵画界のありそうなことだが、リー・ローレンスさんも同じ画風なんだろうか、サインをする場面が一回あったがなんと書いたのか見落とした。
登場人物が偽者臭く、誰も信用できない状態で、観る者をコメディー調に乗せて試されているような作品だった。
⭐️『サウルの息子』で主演したルーリグ・ゲーザが出ていた。
⭐️ ジオ・ゼッグラーさんはスプレーアーチストでBEAMS原宿の壁画を描いている。
🎬『ロケットマンの憂鬱』バラージュ・レンジェル監督、脚本/ハンガリー/90分/日本初上映
1957年、宇宙開発に力を入れていたソ連は同盟国のハンガリーに世界初の宇宙飛行士を選ぶ権利を与えた。そこで候補者として選ばれたのが、ライコ(タマーシュ・ケレステシュ)という空を飛ぶことに人生をかけている若いジプシーの男だった。
この作品はあくまでもドラマだが、ガガーリンさんの前には何人か打ち上げられて失敗、犬のライカの前にもたくさんの動物たちがロケットにのせられて死んだのは想像がつく。
選ばれたのは3名で、ジプシー(ロマ)のライコ、ナチスの女、モンゴルの男だ。当時として使い捨てしやすい人選。一方、ソ連のガガーリンも後に書記長となるブレジネフも出ていて、ひょっとしたら「現実?」と思わせる奇想天外コメディだった。