カザフスタンの僻地の村に住む6歳のエルケン(ズイガー・ミルザベック)は予測できない行動をしたり言葉が遅いために、気にした母親が病院に連れて行くと注意欠陥多動児と診断された。
地元の小学校に通うのは難しいと言われ落ち込む母親だったが、日雇いで酒飲みの父親は特別気にもしていない。
そんな中、エルケンの兄が事故で亡くなる。唯一の希望を失った母親は家を出てしまい……。
カザフスタンの平原は見渡す限り何にもないところ。そこで暮らす少年エルケンはぼんやり何を考えているのかわからない。遠くを見ているような目は「この子大丈夫か?」と何回も思った。
母親が出て行って父親と2人暮らしも淡々と過ごし、父親のいうことをよく聞いて黙々と古レンガを磨いている。父親が酔っぱらって道端で寝ていると聞けば、リヤカーをひいて向かえにいく。
そんな彼が街の学校に行きたいと言い出す……。その希望にも「お、そうかい」と父親はすぐ牛を売って、出ていった母親の姉で街に住んでいるところにエルケンを託す。
ばらばらな家族が絆を強くしていく話は数多あるが、これはバラバラになる話。だが最後の3分間ぐらいで、ジーンと心に響いてきた作品だった。
🎬『僕の帰る場所』藤元明緒監督/日本、ミャンマー/98分/(10月6日順次公開)
東京の小さなアパートに住むミャンマーからやって来た母ケイン(ケイン・ミャッ・トゥ)と幼い2人の兄弟、カウン(カウン・ミャッ・トゥ)とテッ(テッ・ミャッ・ナイン)。
入国管理局に捕まった夫アイセ(アイセ)に代わり、ケインは1人で家庭を支えていた。日本で育ちで母国語を話せない息子たちに、たどたどしい日本語で一生懸命育てているケインだが、父に会えない寂しさで兄弟喧嘩をする毎日だ。
生活に不安を抱いたケインはミャンマーに帰りたいという気持ちを持つようになるが……。
東京国際映画祭アジアの未来部門で日本人監督初のグランプリと監督賞をダブル受賞。その賞にふさわしい作品でドキュメンタリーと思って見ていたら、なんと父親アイセさんの働いている食堂の優しくてよく気がつく店主さんに津田寛治さんが出ていたので、ドキュメンタリーではないと気づいた。
母親と子ら2人は実際の親子で兄・カウン役のカウン・ミャッ・トゥの演技には驚きを通り越して「奇跡」とすら思った。
これは10月6日からポレポレ東中野を皮きりに全国順次公開する。是非是非ご覧いただきたい。